ビットコイン(BTC)カストディ企業「Casa」の最高セキュリティ責任者であるジェイムソン・ロップ氏は、量子コンピュータを使ったビットコインの回収(量子リカバリー)に反対し、ビットコインのプロトコルの一貫性を守るためには失われたコインを焼却(バーン)する方が望ましいと主張した。

ロップ氏によれば、量子コンピュータを保有する個人や機関が、失われたビットコインを回収できるようにすることは、ビットコインネットワークの「検閲耐性」「取引の不可逆性」「保守主義」といった根本的な性質を侵害することになるという。

3月16日に発表した記事の中で、ロップ氏は量子リカバリーの問題点について次のように述べている。

「ビットコインの量子リカバリーを許容することは、富の再分配に等しい。我々が認めることになるのは、量子コンピュータを手に入れた者が、量子コンピュータを知らない者からビットコインを奪うことだ」

「そのような状況に明るい未来は見えない」とロップは続け、最終的に量子リカバリーはビットコインネットワークのセキュリティを損なうだけだと結論づけた。

量子コンピュータがビットコインに及ぼす脅威については今も激しい議論が続いており、「量子コンピュータが現代の暗号技術を脅かすのは数十年先」とする意見もあれば、「そもそも実用化されることはない」との見解、さらには「脅威は差し迫っている」と警告する声もある。

量子コンピュータに脆弱なビットコインはバーンが最善策 = ジェイムソン・ロップ image 0

Jameson Lopp discusses the risks posed by quantum computers at the Future of Bitcoin Conference in 2024. Source: Future of Bitcoin Conference

2024年の「量子脅威騒動」

2024年10月、上海大学の研究者が、軍事や銀行業務で使われる暗号標準を量子コンピュータで破ったと主張し、「2024年の量子脅威」として注目を集めた。

しかし、YouTuberの「Mental Outlaw」はこの主張を誇張だと批判し、研究者らは実際には現代の暗号標準を破っていないと指摘した。

Mental Outlawによると、研究チームの量子コンピュータが因数分解できたのは「2,269,753」という整数であり、確かに量子コンピュータの新記録ではあるものの、古典的コンピュータがすでに達成した水準には遠く及ばないと述べている。

さらに、同YouTuberは、この量子コンピュータが破ることができたのは「22ビット」の鍵であり、一方で古典コンピュータの記録は「892ビット」鍵の因数分解であるとも指摘した。

現代の暗号鍵サイズは通常2048ビットから4096ビットとされ、さらに将来的には鍵サイズの拡張も可能であり、セキュリティは依然として保たれている。